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KiPAS研究紹介 大橋洋士 - 強相関量子多体現象を定量的に解析・予言できる量子場理論の開発研究

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慶應義塾基礎科学・基盤工学インスティテュート(KiPAS)研究紹介
物理学科教授 大橋洋士
物理学科の大橋洋士教授は猪谷太輔研究員とともに超伝導、超流動現象を中心に、粒子間に働く相互作用が重要な役割を果たす量子凝縮現象の理論研究を行っています。
「私がやっているテーマは、強相関量子多体系を定量的に研究できる理論を構築しようという問題を取り扱っています。現代物理学において、粒子の量子性と粒子間の相互作用というのは、非常に重要な要素です。例えば超伝導という現象があるのですが、それは粒子の間の相互作用によって、クーパー対という分子をつくって、それがボーズアインシュタイン凝縮というある種の量子凝縮を起こす事によって実現しています。
その際には粒子間に働く相互作用というのが非常にポイントになっていまして、クーパー対を作る相互作用をいかに強くするか、という事がいまだ人類が実現していない室温超伝導を実現させる鍵になると考えられています。」
現在、室温で金属に通電させると、電気抵抗が発生し電気を届ける際に大量の電気が失われてしまいます。
しかし、金属をマイナス100℃以下という超低温にして超伝導状態にすると、電気抵抗が完全に消失するため、電力ロスなしで電気を効率的に運用する事が可能になります。したがって、この超伝導状態が室温でも実現できれば、基礎科学だけではく、技術的にも革新的な進歩が期待できます。
大橋教授は人類の夢ともいえるこの室温超伝導実現させるには、理論的な取り扱いが難しい粒子間相互作用に量子性の要素をプラスした理論が必要になると考え、
解析計算と数値計算を駆使し、強相関量子多体系に対し信頼できる理論の構築を進めています。
「我々は、ひとつは手計算をやるわけですが、そうした解析的な計算だけでは、なかなか現実と比較するというところまでは相互作用が入ると難しくなります。そこで我々は解析計算に加えて、数値計算を併用する事によって、手では解けない部分については、コンピュータを使って、実験と比較できるところまで、計算しようというアプローチをとっています。」
大橋教授は近年実現された人工量子多体系である冷却フェルミ原子気体で実現される超流動を研究対象に取り入れています。
冷却フェルミ原子気体は、超流動状態の実現に決定的に重要な粒子間相互作用はじめ、系の物性を支配する様々な物質パラメータを実験的に自在、かつ精密に制御できるという画期的な特長を持っています。これを利用することで、構築した理論の正当性や問題点を、冷却原子気体という現実に存在する量子多体系を使い、あいまいさなく詳細に検証することができます。
私は冷却原子系の中でもP 波と呼ばれる相互作用を使った超流動現象の研究を行っていまして、特にその中でも理論的に相互作用が強くなると重要になってくる「ゆらぎ」の効果を取り入れて、色々な物理量、例えば、状態密度やスペクトル強度、相図、そういうものをコンピュータを使って計算するという事を行っています。」
「例えば、実験的にはP 波の超流動というのは実現していませんで、例えばどこの温度まで下げたら超流動にはいるか、超流動が実現したら、超流動状態においてどのような性質をもっているか、そういうものを理論的に明らかにすることが可能ですね。」
「現在冷却フェルミ原子気体は様々な実験が進歩して来まして、熱力学量の測定が様々可能になって来ました。」
「単純に相互作用の効果を理論に取り込んだだけでは解決できないという事がわかっています。これをどのように克服するか。現在それは理論の基礎から考えないといけないんですが、この問題を克服しないと、フェルミ粒子系の超流動理論と言うのは最終的に完成しませんので、この5年間をかけて何とかそれを克服する道筋をつけたいと考えております。」
Category
教育 - Education
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