慶應義塾基礎科学・基盤工学インスティテュート(KiPAS)研究紹介
生命情報学科准教授 牛場 潤一
KiPAS主任研究員として研究活動を開始した生命情報学科・牛場准教授は、シソット研究員と共に、ブレイン・マシン・インターフェイスによって擬似的に身体構造を強制拡張し、個体群が新奇な身体と環境へ適応する過程を自然科学的に調べることで、知性を持った生物が新たに獲得した知識情報の遺伝と進化のメカニズムを明らかにしようとしています。
「元々私自身は猿から人へと進化のことってすごく興味があったんですね。尻尾があったりだとか尻尾がなかったり体の形が少しずつ進化の過程で変わっていくわけですけども、必ずそれは生き延びて生存している種はその特異に進化した体を上手に使いこなしているわけですね。
考えてみると、体が例えば変化してもそれをコントロールする脳自体がそれに適応する能力を持っていなければ当然それは自分の体のように使いこなせないわけですね。ですから恐らく私が考えるひとつの進化の大切なキーワードは脳そのものが実は我々が考えている以上に柔軟に外的なものに対して適応する能力を持っていて、だからこそ突然変化した体の部位に対してそれを自分の体の一部のように取り込んで適応していき進化してくるというプロセスが起きるんじゃないかなと思ったんですね。そういうことを自然科学的な方法によって本当に検証することはできないのだろうかと思ったのがそもそもの研究のきっかけです。」
研究方法は、ブレイン・マシン・インターフェイスで駆動することのできる人工のしっぽを身体に取り付けた10名程度の集団に、実験室のなかで生活してもらいます。参加者は、その人工しっぽの操作方法を習得して、自分の身体のように使いこなそうと試行錯誤し、さらには獲得したブレイン・マシン・インターフェイスの制御方法を仲間で共有しようとします。
「最初人は尻尾をどのように使用したら良いか分かりませんが、ある種のトレーニングを積めば尻尾をコントロールする方法で脳の活動を人が調整できます。次のステップは、同じ技術を用いて、ある種の「遺伝」と呼べる現象、すなわち、新たに獲得されたスキルが他の人へ伝承されるプロセスを研究することです。従って、次のステップでは同じ部屋に一人以上の人に入ってもらい、尻尾を正しく使うスキルをすでに獲得している最初の人が、部屋の中を歩きまわり、他人と話をすることにより、これら習得したスキルを他人に伝えるような状況を作り出します。一定の期間に他の全員が、めいめいのやり方で同じスキルを獲得していきますが、この技術を用いれば、各人がそれぞれ新スキルをどのように習得していくかをモニターすることができます。」
スポーツ、舞踊、音楽などの身体運動トレーニング法や伝統芸能、手工芸の世界では、さまざまな流派や流儀があって、普遍的な技術伝承理論は確立されていません。これに対して本研究の成果は、身体運動の制御則・学習過程・他者への伝承過程に関する科学的な理論を提供するため、これらの産業や文化活動の科学的発展に貢献し得るものになります。
「ちゃんと正しく頭のなかで獲得された情報が他者に確実に伝承されるというメカニズムがない限り何百年も維持されてあるいはさらに進化していくっていうようなこれらの文化的な活動というのは存在し得ないはずなんですよね。
こういう尻尾の研究を通じて私が真に明らかにしたいのは形のない情報というものが頭のなかで作られてそれが伝承していくプロセス、これによって文化や文明というものがどのように形作られているのかそういったものの一端を自然科学的に明らかにしたいと思っています。」
生命情報学科准教授 牛場 潤一
KiPAS主任研究員として研究活動を開始した生命情報学科・牛場准教授は、シソット研究員と共に、ブレイン・マシン・インターフェイスによって擬似的に身体構造を強制拡張し、個体群が新奇な身体と環境へ適応する過程を自然科学的に調べることで、知性を持った生物が新たに獲得した知識情報の遺伝と進化のメカニズムを明らかにしようとしています。
「元々私自身は猿から人へと進化のことってすごく興味があったんですね。尻尾があったりだとか尻尾がなかったり体の形が少しずつ進化の過程で変わっていくわけですけども、必ずそれは生き延びて生存している種はその特異に進化した体を上手に使いこなしているわけですね。
考えてみると、体が例えば変化してもそれをコントロールする脳自体がそれに適応する能力を持っていなければ当然それは自分の体のように使いこなせないわけですね。ですから恐らく私が考えるひとつの進化の大切なキーワードは脳そのものが実は我々が考えている以上に柔軟に外的なものに対して適応する能力を持っていて、だからこそ突然変化した体の部位に対してそれを自分の体の一部のように取り込んで適応していき進化してくるというプロセスが起きるんじゃないかなと思ったんですね。そういうことを自然科学的な方法によって本当に検証することはできないのだろうかと思ったのがそもそもの研究のきっかけです。」
研究方法は、ブレイン・マシン・インターフェイスで駆動することのできる人工のしっぽを身体に取り付けた10名程度の集団に、実験室のなかで生活してもらいます。参加者は、その人工しっぽの操作方法を習得して、自分の身体のように使いこなそうと試行錯誤し、さらには獲得したブレイン・マシン・インターフェイスの制御方法を仲間で共有しようとします。
「最初人は尻尾をどのように使用したら良いか分かりませんが、ある種のトレーニングを積めば尻尾をコントロールする方法で脳の活動を人が調整できます。次のステップは、同じ技術を用いて、ある種の「遺伝」と呼べる現象、すなわち、新たに獲得されたスキルが他の人へ伝承されるプロセスを研究することです。従って、次のステップでは同じ部屋に一人以上の人に入ってもらい、尻尾を正しく使うスキルをすでに獲得している最初の人が、部屋の中を歩きまわり、他人と話をすることにより、これら習得したスキルを他人に伝えるような状況を作り出します。一定の期間に他の全員が、めいめいのやり方で同じスキルを獲得していきますが、この技術を用いれば、各人がそれぞれ新スキルをどのように習得していくかをモニターすることができます。」
スポーツ、舞踊、音楽などの身体運動トレーニング法や伝統芸能、手工芸の世界では、さまざまな流派や流儀があって、普遍的な技術伝承理論は確立されていません。これに対して本研究の成果は、身体運動の制御則・学習過程・他者への伝承過程に関する科学的な理論を提供するため、これらの産業や文化活動の科学的発展に貢献し得るものになります。
「ちゃんと正しく頭のなかで獲得された情報が他者に確実に伝承されるというメカニズムがない限り何百年も維持されてあるいはさらに進化していくっていうようなこれらの文化的な活動というのは存在し得ないはずなんですよね。
こういう尻尾の研究を通じて私が真に明らかにしたいのは形のない情報というものが頭のなかで作られてそれが伝承していくプロセス、これによって文化や文明というものがどのように形作られているのかそういったものの一端を自然科学的に明らかにしたいと思っています。」
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