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中国EV市場のリアルを佐藤支局長が解説(2020年8月17日)

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世界最大の規模を誇る中国の自動車市場。
日本を含む世界中の自動車メーカーがその市場の動向に注目しています。
新型コロナウイルスが、世界の自動車産業にダメージを与えています。
しかし、中国では一足早く市場に回復の動きが出ています。
ところが課題も明らかになっているようです。
中国の自動車販売は、世界に先駆けてガソリン車を中心に回復していたのですが、7月の新車販売ではさらに明るいニュースが出てきました。
国営・新華社通信の記事は、EVなど新エネルギー車の販売が13ヵ月ぶりに前の年を上回ったと伝えています。
7月のEVなどの販売台数は、1年前と比べて19.3%の大幅な増加でした。
政府による購入補助金が延長されるなど支援策が追い風となりました。
ただ、1月から7月までの累計販売台数では、1年前と比べてまだ3割以上の落ち込みとなっていて、EV業界が受けた傷跡は依然として深く、今後も順調な回復が続くのかは未知数とも言えます。
こうした状況の中、注目なのが雑誌「中国新聞週刊」です。
EV業界全体の苦境と、新興EVメーカーである「賽麟汽車」が陥った危機について伝えています。
北京市内の高級ショッピングモールにある賽麟汽車の店舗を訪ねてみると、ガラスの扉は閉じられたままになっていて、奥には2台、販売するはずだった小型のEVが置いたままになっていました。
なぜこのような状態になったのか。
中国新聞週刊の記事は、賽麟汽車が設立以来、地元政府や、国営企業などから日本円にして900億円以上を集めたものの、あわせてたった31台しか売れなかったと伝えています。
出資した国営企業側は裁判を起こしていて、賽麟汽車の工場は6月に差し押さえられ事業停止に陥りました。
実は、新型コロナウイルスが拡大して以降、中国では少なくとも3~4社の新興EVメーカーが破綻するなどしています。
ガソリン車メーカーと比べると打撃はやはり大きいようです。
江蘇省南京市が本拠地のEVベンチャー「バイトン」は日本の商社丸紅からも出資を受けて、2020年にEVを初めて販売する予定でしたが、車を生産しないまま7月から半年間の事業停止を決めました。
中国の国営テレビは6月「自動車製造の新勢力はすでに淘汰の段階だ。多くの企業は生きるか死ぬかの瀬戸際に来ている」、「自動車製造の新勢力の代表『バイトン』は経営危機に陥り従業員の給料を4ヵ月払っていない」と伝えました。
中国政府も、弱小メーカーが無残に淘汰され、EV業界が失速するのを黙って見ているわけではありません。
共産党の機関紙、人民日報(海外版)は、政府のテコ入れ策として「農村でのEV販売キャンペーン」が始まったことを伝えています。
このキャンペーンは、EVメーカー約20社が参加し、最大150万円程度の比較的価格の安いEVを、農村に向けて販売しようというキャンペーンです。
中国自動車工業協会の付炳鋒常務副会長は「このキャンペーンで2020年前半の売り上げの低下を補ってくれると期待している」と述べています。
しかし、中央政府はこれまでの購入補助金に上乗せした補助を出すわけではなく事実上、かけ声を上げているだけです。
また、EVにおいて150万円程度は安いといっても、農村部の住民にとってはまだ高値の花で、農村では充電設備の不足も指摘されています。
次世代の製造業をめぐり、世界で主導権を握りたい中国政府にとって、EVはその柱となる産業のひとつです。
しかし、国家財政の悪化の懸念が高まる中、EV業界へのさらなる支援は難しい状況です。

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